どうもタマポポブログのタマポポです。
電気の設計で避けては通れないブレーカー(MCCBまたは遮断器)を選定する際に必ず出てくる言葉『AT/AF』という呪文のような言葉があります。
読み方
- AF(アンペアフレーム)
- AT(アンペアトリップ)
初め見た時は「???」ってなりますよね。
私は「何この文字は??何かの魔法の呪文?」ってなりました^^;
はじめに、この言葉の意味を簡単に説明しますと、
- AT(アンペアトリップ)とは
- ブレーカーの定格値を超えると、トリップする電流値の事です。
- AF(アンペアフレーム)とは(2つ意味があります)
- 1つ目はブレーカーのサイズ(大きさ)を表します。
- 2つ目はブレーカーが壊れない電流値の最大値(最大定格電流)を表します。
それでは、できるだけ詳しく分かりやすく解説していきますね!
本記事で解説するブレーカー(MCCBまたはNFB(遮断器)は「ノーヒューズブレーカー」のことを意味します。
イメージが湧かない方は、家に付いているブレーカーのことだと思って下さい。
ちなみに「ノーヒューズブレーカー」ではないブレーカーは、「ヒューズ付きブレーカー」といいます。
この「ヒューズ付きブレーカー」は、本記事とは違った表記や決まりごとがあります。
ですので、本記事の解説(「ノーヒューズブレーカー」)と「ヒューズ付きブレーカー」の表記や決まりごとは、全く別ものですのでご注意下さい。
それではいってみましょう!
意味:AF(アンペアフレーム) とは
実は「AF(アンペアフレーム)」 には2つ意味があります。
それぞれ見ていきましょう。
①「AF」の1つ目の意味は
AF(アンペアフレーム) とは
遮断器(MCCBまたはブレーカー)に電流が流れても、ブレーカーが壊れない電流値の最大値(最大定格電流値)の事です。
②「AF」の2つ目の意味は
AF(アンペアフレーム)とはブレーカーの横(W)×高さ(H)×奥行き(D)のブレーカーの寸法の大きさを表します。
それでは具体例を交えてて解説していきます。
「30AF/20AT」のブレーカーがあったとします。
「20AT」は別で解説しますので、ここでは「30AF(アンペアフレーム)」に注目して下さい。
「30AF」意味は(意味が2つありましたよね)
- 意味①-30AFはブレーカーに流せる最大定格電流のことです。
(30AFであれば始めの数値の30Aまでです。)
例えば:30Aを超える(例えば31Aとか)の電流が流れるとブレーカーが壊れます。
逆に言えば30Aまではブレーカーは壊れません。 - 意味②-30AFはブレーカーの大きさを表します。
- もう少し具体例を挙げると「30AF/30AT」のブレーカーと「30AF/20AT」のブレーカーの大きさは同じって事です。トリップ(遮断)する電流値が違うだけです。(後述解説)
- メーカーによっては「30AF」と「50AF」のブレーカー寸法が一緒の場合もありますよ。
30AF(アンペアフレーム)の意味は結構簡単だったと思います。
難しいのはAT(アンペアトリップ)の方ですね。
意味:AT(アンペアトリップ)とは
AT(アンペアトリップ)とは
ブレーカーの定格の電流値を超えると、ブレーカーがトリップ(遮断・ブレーカーが落ちる)する値のことです。
例えば
「30AF/20AT」のブレーカーがあったとします。
(「30AF」の意味はご説明しましたので飛ばします)ここでは「20AT」に注目して下さい。)
20AT【アンペアトリップ(遮断)】の ブレーカーに20Aの電流を流すとします。
要は20Aを超える電流が流れると、ブレーカーが落ちるってことです。
後で解説しますが、正確に言いますと、定格値の「○倍(何%)の電流」が、「○秒流れたら」ブレーカーが落ちます。(○には各メーカーの特性表を見ると、○に入る数字が分かります。)
ここでよく間違える人がいるので注意して下さい!
20ATだと20Aピッタリの電流が流れても、実際にはブレーカーはトリップ(遮断)しません。
(そう思っている人がたまにいるので注意して下さい。実は昔は筆者もそう思っていました💦)
全然意味が分からない~!!
まあまあ、順番に理解していこう!
20Aでトリップ(遮断)しない理由は、後述詳しく説明しますが、先に簡単に結論をいいますと「経済産業省の【電気設備の技術基準の解釈】で決まっているから」なんです。
「30AT」表記の場合
30Aの1倍、つまり30Aの電流が流れても、その値の電流でトリップする様なブレーカーは「作っちゃダメだよ」って決まってるんです。
じゃ、どれくらい電流を流せばブレーカーは落ちるの?
それではどれくらい電流を流せばブレーカーを落ちるかを解説していきます。
遮断器がトリップするのは
例:あくまで例ですので数字は適当な数値で解説します。
- 30Aの110%(33A)の電流が流れたら1秒後にトリップ
- 30Aの130%(39A) の電流が流れたら0.1秒後にトリップ
※この特性を知るには、各メーカーの遮断特性表を見ることになります。
上記で説明したように、ブレーカーの「定格電流の何パーセント」電流が流れたら、「何秒後にトリップ」するかを知るためには、各メーカーのブレーカーのカタログに載っている遮断特性表を見ます。
↓メーカーのカタログに載っている下の表が「遮断特性表」です
それでは次は、この遮断特性表の見方をご説明します。
ブレーカーの「遮断特性表」の見方を具体例で簡単に解説
ブレーカーの「遮断特性表」の見方を具体例を交えて分かりやすくに解説していきます。
右上の写真の遮断特性表を見ると青色の線が書いてあります。
その「縦軸」と「横軸」の線を見て下さい。
- 【縦軸】がトリップする秒数
- 上の写真だと1(秒)に丸が付いてます。
- 【横軸】がトリップする規格の電流値の何倍(%)を表します。
- 上の写真だと10(倍(110%))に丸が付いてます。
1つの例として
「30AT」のブレーカー【遮断器】で説明します。
初めは難しいと思いますが、なんでもそうですが慣れるとすぐ理解できますので。
要は「どれだけ表をみたか」の物量の問題です!
上の写真の遮断特性表の
【横軸】
横軸の青色の丸で囲った「10」は、定格電流(今回は30A)の「110%の意味」です。
「30AT」だと30Aの110%、すなわち「33Aでトリップ」するって意味です。
【縦軸】
縦軸の青色の丸で囲った 「1」は、「1秒でトリップする」って意味です。
つまり「30AT」の表記のブレーカーだと、33Aの電流が流れると1秒でトリップするって事です。
理解できましたでしょうか。
ホント慣れると簡単に読み解けるようになります。
それでは最後に「30ATのブレーカーに定格の1倍の30Aの電流を流してもトリップしない理由」を解説します。
30AT(アンペアトリップ)の表記で、30Aの電流ではトリップしない理由
ここでは『なぜ』30AT(アンペアトリップ)の表記で30A電流、つまり「定格値の1倍」の流れても、ブレーカーはトリップしないのかをご説明します。
トリップしない理由は、経済産業省の【電気設備の技術基準の解釈】で以下の事が決められているからです。
【電気設備の技術基準の解釈】一部抜粋
【第33条3】
過電流遮断器として低圧電路に施設する配線用遮断器(電気用品安全法の適用を受けるもの及び事項に規定するものを除く)は、次の各号に適合するものであること
【第33条3.1】
定格電流の1倍で自動的に動作しないこと
簡単に具体例を挙げて説明しますと
「ブレーカーを製造する会社は、30ATと表記されていても、30Aの1倍の電流、つまり30Aではトリップ(遮断)させるブレーカーは作ってはダメ」という事です。
何となくご理解いただけたでしょうか。
要はブレーカー(遮断器)を作る(製造する)際、作る(製造する)ルールが決められているってことです。
まとめ:難しく考えず「AF」はブレーカーの大きさと、壊れる電流値・「AT」はトリップする電流値のこと
AF(アンペアフレーム)とAT(アンペアトリップ)の意味はご理解いただけたでしょうか。
- AT(アンペアトリップ)とは
- ブレーカーの定格値を超えると、トリップする電流値の事です。
- AF(アンペアフレーム)とは(2つ意味があります)
- 1つ目はブレーカーの寸法(大きさ)を表します。
- 2つ目はブレーカーが壊れない電流値の最大値(最大定格電流)を表します。
何回かブレーカー選定をやれば、自然と身体で覚えるのでご安心下さい。
様々な職種で言えることですが、ホント専門知識って「底なし沼」って呼ばれているくらい奥が深いですよね(^_^;)
一つずつ理解してプロフェッショナルを目指しましょう!
解説は以上です。
最後まで読んでいただきありがとうございました(*^^)v